〜個人の趣向〜
第5話〜いい女になるぞ!プロジェクト〜

二人は酒を飲んでいる。

チノ「もうよせ。ヤケ酒は見苦しいぞ。そんなに悔しいなら自分を磨けばいい。別れて損したと思わせてやるんだ」

ケイン「チノさん、私を・・・女にしてくれる?」

翌朝。

けたたましく鳴る目覚ましを止めると、ベッドの隣にいるケインに気付く。

二人同時に驚いて飛び起きる。

ケイン「なぜ私の部屋に?」

チノ「僕の部屋だ」

ケイン「連れ込んだの?」

チノ「侵入者は君だ」

ゆうべのことを思い出すケイン。

-------------------------------------------------------------------
ケインの回想。

ケイン「私を・・・女にしてくれる?」

チノ「意味を解ってるのか?」

ケイン「私だって本当の意味で大人の女になりたいのよ」

チノ「男に向かって女にしてくれだって?いくらバカでもここまでとはな。救いようがない」

ケイン「待って、チノさん!真剣に頼んでるの。もう誰にも女じゃないとは言わせない」

チノ「それで真剣なつもりか?」

ケイン「男に生まれても男として生きられないチノさん。あなたなら解ってくれるはずよ。だからお願い」

チノ「人のことにかまってる暇はない」

振り切って行ってしまうチノ。

後を追うケイン。

そしてまたチノの部屋で飲む二人。

もう二人ともグダグダだ。

チノ「つまり、奴の言葉はこうだ。お前が俺と寝てくれないからオサラバした。解ってるのか?」

ケイン「もちろんよ」

チノ「女にしてくれなんて僕に頼むのは間違ってる。そうだろ?」

ケイン「だけど男と女は寝ないと愛し合ってるとは言えないの?」

チノ「『こいつを抱きたい』好きな女が出来れば誰でもそう思う。愛する人に触れそして抱きたいと思うのは男の本能なんだ」

ケイン「男の本能?あなたに解るの?」

チノ「とにかく飲め」

ケイン「たとえ身体の関係がなくてもかけがえのない人っているでしょ?そんな存在でありたいの。相手の心が求めてやまないような存在なら身体の関係があろうとなかろうと捨てられはしないはずよ」

-------------------------------------------------------------------
チノ「僕のベッドだぞ」

ケイン「おかげでよく眠れた。チノさん、ありがとう。きっとママが巡り合せてくれたんだわ」

チノ「顔を洗えよ。目ヤニをとらないとまたフラれるぞ」

ケイン「ゆうべ約束したよね」

チノ「酔ってて覚えてない」

ケイン「え?じゃこう言ったことも?保証金は返さなくていい、出ていくって」

チノ「僕がいつ・・・」

ニヤっと笑うケイン。

ケイン「協力お願いよ。『いい女になるぞ!』プロジェクト」

チノ「君がうるさく泣きついて無理矢理・・・」

ケイン「嘘つきが一番嫌いだと言ってたくせに」

チノ「解ったよ。やっても無駄だろうけどね」

チノに抱きつくケイン。

ケイン「あなたは本当にママからの贈り物だわ」

チノ「さっさと顔を洗え」

チャンニョルの新居。

イニ「あきれた。午前様?話が途中だと言ったはずよ。聞いてる?何とか言ったら?出てって」

二人の関係を整理する話し合いでもめる二人。

進展はない。

ケインはチノの顔色を伺いながらコーヒーを入れて持ってくる。

ケイン「朝の1杯よ」

チノ「インスタントか?」

ケイン「教官のために心を込めて入れたのよ」

チノ「軍隊じゃないぞ。誰が教官だ」

ケイン「故事成語にもあるわ。鉄は熱いうちに打て」

チノ「故事成語?ことわざだ」

ケインの服を見て。

チノ「それ洗ってるのか?毎日着てるよな。寝る時も出かける時もだ。デートの日もジャージか?女扱いされなくて当然だ」

ケイン「早く彼に会いたくて着替える時間を省略したの。それがふられる原因になるの?」

チノ「そうだ。都合のいい女は飽きられる。相手をじらすのも必要なことだ」

※その1:女性としての自覚を持て

ケイン「早速始めて」

水を張った洗面器を持ってくるチノ。

チノ「つけて」

ケイン「は?」

チノ「顔をつけるんだ」

ケイン「なぜ?」

チノ「君が目指すのは男が求めてやまない女だろ?自分から求めてはダメだ」

ケイン「もう少し解りやすく・・・」

チノ「早く会おうと下着姿で飛び出すのは・・・」

ケイン「下着はないわよ?」

ムっとするチノに謝るケイン。

チノ「デートには10分遅れて行くのが鉄則だ」

※その2:男は待たせてじらせ

ケイン「なぜ10分?」

チノ「私語が多い」

ケイン「すみません」

チノ「男はじらされる程相手をモノにしたくなる」

ケイン「あぁ・・・」

チノ「本当に解ってるのか?必要なのは忍耐力を養うことだ。相手に呼ばれてもじっと待つこと。いいかな?」

ケイン「さすがです、教官」

チノ「では始めて」

顔をつけようとして躊躇するケイン。

ケイン「水責めじゃあるまいし・・・」

チノ「指導に従えないならやめたまえ」

ケイン「やればいいんでしょ」

※その3:耐えてこそ愛は成就する

ストップウォッチで計るチノ。

顔を上げようとするケインの頭を押さえて無理矢理押し付けるチノ。

死にそうな顔で顔を上げるケイン。

チノ「たった40秒だぞ」

ケイン「死にそう。これじゃ拷問だわ。本当に役に立つの?」

次の修行。

狭い物置に連れてくるチノ。

チノ「何があっても出てくるな」

閉じ込める。

チノ「彼が待ってると仮定し1時間じっと耐えること。いいね?」

ケイン「ねぇ、マンガを2冊ほど・・・」

チノ「遊びじゃないぞ!」

ケイン『この中で1時間も?』

チノ「宅急便だよ」

出てくるケイン「どこ?」

チノ「出るなと言ったろ」

チノ「お昼にしようか」

出てくるケイン「そうね」

睨むチノ。

チノ「家事だ!」

出てくるケイン「大変!大変!」

また睨むチノ。

そうやって2時間12分。

ケイン「1時間たった?」

※その4:女らしさはウォーキングから

1本の線の上を歩くチノ。

ケイン「さすがゲイは身のこなしが違うわ」

睨むチノ。

チノ「まるでカカシだな。違う!前に伸ばすんだ」

ケインの頭にグラスをのせるチノ。

チノ「腕を開いて」

グラスが落ちて割れてしまい慌てて拾うケイン。

ケイン「どうしよう!」

チノ「また手を切るぞ。ゴム手袋持って来い。何を見てる?早く手袋を」

ケイン「チノさん、ずっと友達でいてね」

次の修行。

焼肉を前にして待て!状態のケイン。

※その5:女は少食であるべし

チノ「女性はデート中あまり食べない」

ケイン「緊張するから?」

チノ「男に嫌われないためさ」

ケイン「私が思うにチマチマ食べる方が失礼よ。食事を楽しんでないと思われるわ」

チノ「一理ある」

ケイン「では、早速!」

チノ「肉に飛びつくな」

そこへ同時にやってくるサンジュンとヨンソン。

ヨンソン、サンジュン「お邪魔します」

ケイン「どうして一緒なの?」

ヨンソン「門の前でばったり」

サンジュンが食べようとするが。

チノ「それ僕の箸だぞ」

ヨンソン「わざと冷たくすることないわよ。普段通りにして。アーンして食べさせたら?遠慮しないで」

ケイン「やめなよ。チノさんが怒るわ」

ヨンソン「どうして?二人が恋人同士だって知ってるのよ?私達に隠す必要ある?でしょ?私ゲイの友達がいるの。だから理解してる」

サンジュン「なるほどね・・・え?」

ケイン「ヨンソン!人前でゲイは禁句よ!」

頭を抱えるチノ。

チノの部屋で二人。

サンジュン「ゲイだと思われてるって?」

チノ「先輩もだよ」

頭を抱える二人。

チノ「悪い。僕のせいだな」

サンジュン「だけどここで暮らすには都合がいい。チノ。コンペ入選のためだ。俺もゲイになりきる」

チノ「先輩は何もしないでくれ」

サンジュン「いや、覚悟を決めた。俺はお前の先輩じゃない。ハニーだ」

チノ「よせよ」

サンジュン「すぐに慣れる」

チノ「先輩!」

サンジュン「チノ・・・」

チノ「帰れ」

サンジュン「人にどう言われても俺はお前を・・・」

追い出されるサンジュン。

サンジュン「ハニー、話が・・・」

外に飛び出したサンジュンは一人笑い転げる。

そして追ってきたヨンソンに慰められる。

一芝居うつサンジュン。

館長に会うため館長が通うジムに現れるチャンニョル。

だが相手にされずに去っていかれるチャンニョル。

サンゴジェ。

チノの部屋のドアをこっそり開けてみるケイン。

チノ「またゲイだと言ったな」

膝をついて両手を上げるケイン。

ケイン「悪かったわ」

チノ「念書もある。約束通りいうことを聞いて貰うからな」

ケイン「情状酌量って言葉もある。ヨンソンは事実を知ってるし・・・」

ケインの携帯が鳴る。

ケイン「手を下ろしちゃだめ?」

チノ「知るもんか」

ケイン「大事なメールが」

チノ「お好きに。次は許さないぞ」

携帯を見るケイン。

ケイン「やった!面接に来いって。アドバイスをくれない?何を着ていくべき?」

チノ「関係ないね」

ケイン「ごめんなさい。反省してる」

ちょっと笑うチノ。

ケイン「教官、美しい肌の秘訣は?」

キッチンで二人。

チノ「はちみつ」

ケイン「はい」

チノ「牛乳」

ケイン「どうぞ」

チノ「卵の卵黄」

ケイン「いい味」

チノ「よせ。パック用だぞ?」

ケイン「お昼もロクに食べてないのよ」

チノ「じゃ全部どうぞ」

ケイン「パックよね」

チノ「昆布の粉」

二人でパックする。

チノ「どうして僕まで・・・」

ケイン「捨てるのは惜しいし食べるのもなんだし」

チノ「さっき舐めてたくせに」

ケイン「しゃべっちゃダメ。彼氏のために耐えて」

チノの携帯が鳴る。

チノ「もしもし?チャンミ(母)さん?」

※チノは母を名前で呼んでいる。

ケイン「女の人?」

母「ひどい息子ね。日曜にも帰らないなんて」

チノ「ごめん、忙しくてね」

ケイン「女でしょ?」

母「誰かいるの?」

チノ「いや、近所の犬が吠えてる」

母「人間みたいな声を出す犬ね。デートでもしない?」

チノ「残念だが仕事が残ってる」

ケイン「優しくすると勘違いされるわよ」

チノ「ごめん。また電話する」

ケイン「思わせぶりなこと言って・・・女を泣かす気?あなたに好かれてると誤解したら・・・」

チノ「好きさ」

ケイン「え?まさか・・・」

チノ「何だよ?」

ケイン「女性も好きなの?」

チノ「母だよ」

ケイン「チャンミさんと呼んでたわよね?」

チノ「悪いか。そう呼ばれたがってる」

ケイン「素敵ね。名前で呼べる仲のいいお母さんなんて。ママが生きてたら私も名前で呼ぶのに。ウニョンさん」

チノ「いつ亡くした?」

ケイン「5歳の時よ。それがね変なの」

チノ「何が?」

ケイン「5歳なら少しは覚えてるはずなのに何も思いだせない。顔だって写真を見て知ったのよ」

チノ「頭が悪いからさ」

ケイン「そうね」

チノ「冗談だよ」

ケイン「ううん、本当に頭が悪いの。だから何をしてもうまくいかない」

チノ「母親を失うのは5歳の子には耐えがたい。だから自分を守ろうと母親の記憶を封印した。そう思わない?」

ケイン「チノさん、まだ言ってなかったわよね。うちへようこそ。歓迎するわ」

翌朝。

チノ「おはよう」

お互いの顔を見て驚く。

顔に発疹が出来ている。

チノ「アレルギー?」

ケイン「食中毒?私も?」

チノ「僕も?」

ケイン「パックのせいだわ」

チノ「古い卵を?」

ケイン「どうしよう。面接なのに」

事務所で。

チノは顔を隠すためにタオルをかけてごまかしていたが、テフンとサンジュンにバレる。

そしてテフンにサンゴジェに住んでいることがバレたことを知る。

一方チャンニョルと父。

タム美術館自体はチェ館長に一任されているが実権を握っているのはその父である会長だと話している。

便宜を図って貰うのは無理だとしても応募資格を設けさせチノ達が応募出来ないようにさせることは可能だと。

その頃、館長は電話中。

イニ「イギリスにいるパク教授に繋がりました」

館長「こんにちは。以前設計を依頼しましたチェです。いえ、今日は別件でお電話を。コンペの審査に加わって頂けませんか?資料をお送りしますので・・・何とか検討頂けませんか?お気持ちが変わったらいつでもご連絡を。失礼します」

イニ「今回もノーですか?」

館長「サンゴジェへ行く」

面接から戻ったケインは家の前に積まれたボロボロの家具を見つける。

ヨンソンが持ってきたのだ。

それにケインがペンキを塗っている。

ケイン「これだけの木材を捨てとく手はない」

ヨンソン「さすが本職ね。芸術だわ」

ケイン「通販で何買ったの?」

ヨンソン「顔を洗うのが面倒な人にピッタリのアイテム。洗顔オイル。毎日洗わなきゃダメよ」

ケイン「注文した日に到着?」

ヨンソン「友達が働いててね。面接に落ちたのに家具を作る元気が?」

ケイン「落ち込んでも仕方ない」

ヨンソン「そのおおらかさには感心する。友達に男を取られても、借金を肩代わりさせられても、どこ吹く風だもんね。鈍感なだけ?」

ケイン「でもさ、経歴を重視するなら書類審査で落とせばいいのよ。面接に呼んで留学経験だの受賞歴だの聞く必要ある?やっぱり会社勤めはお断り」

ヨンソン「お断りされたのはどっちよ。チノさん遅いわね。化粧品を渡すついでに目の保養をしたい。最近彼とずいぶん仲良しね。私も一緒にパックしたかった。とはいえ相変わらず嫌味はキツイ?」

ケイン「それがもう慣れた。チクチク刺す言葉が心地よくてさ。それにごくたまにだけどふとした時・・・胸にぐっとくることを言うのよ。だからね、私も思わずうちへようこそなんて言っちゃった」

ヨンソン「危険だわ」

ケイン「何が?」

ヨンソン「好きになっちゃったらどうするの。地獄の始まりよ」

ケイン「ヨンソン、いっぺん死んでみる?それこそ地獄よ」

サンゴジェを訪ねてきた館長。

教授ではなくケインに会いにきた館長はそう伝えるが、父の使いかと思い慌てるケイン。

恐る恐る門を開けてみると館長が。

ケインを思い出す。

結婚式をぶち壊したこと、焼肉屋でのゲイ発言を。

名刺を渡す館長。

庭にあるペンキ塗りたての家具を見る館長。

館長「あれは?」

ヨンソン「この子(ケイン)がリメイクしたんです。近所の店に寄贈をしようと」

館長「背が低い子用ですか?」

ケイン「よく解りましたね!」

何かを考える館長。

ケイン「父とは疎遠なのでお力になれずすみません」

館長「先日は度胸のある方だと思ったのですが父君には弱いようですね」

ケイン「以前会いました?さっき私をチノさんの友達と・・・なぜです?」

館長「その話はまたの機会に。今日のところはこれで」

ケイン「お気をつけて」

チノの事務所。

設計図をじっと見ている。

チノ「謎だ。会長がサンゴジェに魅せられた訳は?」

サンジュン「凡人の俺には見当もつかない」

チノ「何か秘密がある」

サンジュン「もしや・・・噂を聞くだろ?国会議事堂が二つに割れ中からロボットが出現とか。サンゴジェの場合は教授がボタンを押すと正義の味方が・・・」

チノ「笑えるか?」

サンジュン「頭を柔らかくしろってことさ。謎だな」

そこへケインから電話が。

ケイン「顔のブツブツはひいた?」

チノ「ああ」

ケイン「よかった。私も治ったわ。ヨンソンによると昆布のせいだって」

チノ「面接は?」

ケイン「見事に惨敗」

チノ「堂々と言うな」

ケイン「ごめん。がっかりさせて」

チノ「謝ることはない」

ケイン「今日は早く帰る?」

チノ「なぜ?」

ケイン「出来たら一緒に夕飯を食べない?」

チノ「どうかな」

その会話を後ろで聞いてたサンジュン。

サンジュン「早く帰る?まるで新婚だな」

チノ「冗談じゃない」

サンジュン「そうだ、早く帰れ。一緒にメシを食べてついでに風呂も・・・」

チノ「ふざけるな!」

大笑いのサンジュン。

帰る道中にイニから電話が入るチノ。

この間の食事に誘われる。

チノ「どうぞ」

イニ「ごちそうして貰う約束を思い出したんです。迷惑でした?」

チノ「いいえ」

そう答えながらチノはさっきのケインの電話を思い出していた。

チノ「せっかくですが、今日はお茶だけにしませんか?」

イニ「建築家の集いにはいらっしゃる?誰が来るか伝えるにはお茶の時間だけでは足りないわ」

サンゴジェ。

チノの帰りを待ちながら食卓の準備をしているケイン。

でもなかなか帰ってこない。

レストランでは。

イニ「高3で両親を亡くした後ケインの家に下宿することになったの。一人ぼっちの私が寂しくないように気遣ってくれた。学校でも家でもそばにいて私を支えようとしてた。でも優しくされる程自分が惨めになったわ。叫びたかった。いい子ぶるな」

チノ「彼女はもともと人がいい」

イニ「恵んで貰うのはもううんざり。奪ってやりたかった。優しいあの子が大事なものを奪われてもいい子でいられるか試したかった」

チノ「残念ですね。そこまでの覚悟で奪ったのに結局不幸なままとは。悪者になりきれないのが惜しい」

イニ「確かに。詰めが甘かったみたい。今の言葉に少し救われたわ。君はそれほど悪い人じゃない。そう聞こえた。よければお酒を頼んでも?飲みたい気分なの」

門の外でウロウロしながら待ってるケイン。

帰りの車中で。

無理な追い越しを受けてとっさに助手席のイニをかばうチノ。

チノ「大丈夫?危ないな」

イニ「本当に女には惹かれない?なぜかしら。私にはあなたが男に感じられる」

チノ「飲みすぎです」

イニを新居まで送り届けたチノ。

その時チャンニョルも偶然帰ってくる。

イニとチノの二人が一緒に帰ってきたのを見てしまう。

チャンニョル「なぜチノと一緒なんだ?」

イニ「食事したの」

また例のごとく揉める二人。

イニを送り届けたチノは道中パン屋に寄る。

いくつか買いこんで車に戻る。

チノ『待ってるわけないか』

その頃ケインは、まだ門の外でチノを待っていた。

ご飯も食べずに。

チノ「外で何を?まさか待ってた?」

ケイン「恋人が二人いて忙しくても電話くらいしてよね。テンジャンチゲを作ったのよ」

チノ「うまかったことにしとく」

ケイン「本当にうまく出来たのに」

チノ「解ったよ。夕飯はまだ?」

ケイン「二人分たいらげたわ。これは?」

チノが持っていた紙袋を取ろうとするが。

チノ「特訓の成果がないな。飛びつくなと言ったろ?」

ケイン「いちいちうるさいわね」

チノ「そうかい?」

ケイン「人をバカにして・・・」

チノ「届くかな?」

その時、ケインのお腹が鳴ってしまう。

食事に連れてくるチノ。

ケイン「すっごくおいしそう!うちで食べてもよかったのに」

チノ「じゃ、そうするか?」

ケイン「注文した以上は食べなきゃ。もったいない」

と言いながら手づかみで魚をほぐすケイン。

ケイン「どうぞ」

チノ「手は洗った?」

ケイン「洗ってない。嫌なら私が・・・」

チノ「いいよ。何事も忍耐だ」

ケイン「夕飯も食べずに今まで何を?」

チノ「その・・・残業があってね」

イニと一緒にいたとは言えない。

ケイン「私も作業があって食べ損ねただけよ。何も食べずに待つなんてもうたくさん」

言ってしまってからバラしてしまったことに気付くケイン。

結局は自分を待っていたと知るチノ。

チノ「チャンニョルとも同じようなことが?」

ケイン「その・・・彼の前でお腹が鳴っちゃって・・・」

チノ「食い意地が張ってるのに無理して待つから失敗するんだ」

ケイン「だから今変わろうと努力してるの」

チノ「いいから早く食べろよ」

外を歩く二人。

ケイン「チノさん、ごちそう様。お腹が破裂しそう」

チノ「男の前ではしたない」

ケイン「小言ばっかり。チノさん、女を磨いて変われたらまた人を好きになれるかな?」

ふと見つけるゲーム機に近寄るケイン。

チャンニョルと一緒にやったのを思い出す。

ケイン「チノさん、小銭ちょうだい。500ウォン。ストレス解消に最高よ!」

チノ「食事をおごったぞ」

ケイン「デザート代ってことで、お願い」

いれてあげるチノ。

1発目、殴って思い出す。

『お前を愛してなかった』

2発目、殴って思い出す。

『何ていうかお前は俺にとって雨に濡れてさまよう子犬のような存在だった』

3発目、殴ろうとしてチノに止められる。

チノ「もうよせ」
ケイン「あと1発残ってるじゃない。もう少しでスッ
キリしそうなの」

チノ「そうは思えないな。チャンニョルを殴れよ。君が殴りたいのはあいつだろ」

ケイン「彼を殴っても何も変わらない。結局は何の魅力もないパク・ケインのまま。結局私は物に当たるしかないのよ」

チノ「本当にしたいことは?どうすれば吹っ切れる?」

ケイン「解らない。どうすれば吹っ切れるのか、忘れられるのか、解らない」

チノ「土曜は空いてるか?一緒に行くところがある」

ケイン「どこ?」

チノ「パーティさ。チャンニョルも来る。そこであいつに見せてやるんだ。魅力的な女性になって別れたことを後悔させてやれ」

ブティックに連れてきたチノ。

試着室から出てくるケイン。

ケイン「おかしいよね?」

チノ「見合いじゃないぞ」

ケイン「どう?」

チノ「スカートが短すぎる」

ケイン「どうよ」

チノ「ボディガードか」

レジでお金を払うチノ。

ケイン「世話になりっぱなしで悪いわ」

チノ「そう思うなら当日ヘマするなよ」

ケイン「ずっとパーティに憧れてたの。映画の世界よね!すごく楽しみ」

チノ「浮かれるな」

以前仕事でかかわった美容院へ連れてきたチノ。

チノ「パク先生」

パク「何よ、何なのよ!あら、チノさんじゃない!お久しぶり。元気だった?」

チノ「改装工事以来ですね」

パク「そうよ。もう!ひどくない?全然顔を見せてくれないなんて」

チノ「すみません、忙しくて」

パク「まあいいわ」

隣のケインを見るパク先生。

パク「こちらは?」

チノ「友達です。髪のセットを頼みたくて」

パク「友達?」

チノ「友達です」

パク「そう。友達ね、ふん!」

思わず尋ねる。

ケイン「3人目?妹と言えばいいのに」

チノ「納得されたらショックだ」

パーティ会場。『建築家の集い』

チノ「準備は?」

ケイン「うん」

チノ「僕がついてる。さあ」

腕を組む二人。

二人見つめ合いながら会場に登場。

驚く、イニ、チャンニョル。

ケインがまるで別人だったから。

イニ「ようこそ」

チノ「どうも」

イニ「ケインと一緒なんですね」

チノ「僕の同伴者です」

チャンニョル「知り合いか?おい、ケイン。なぜお前がこいつと?」

ケイン「あなたに関係ある?」

サンジュン「チノ、決まってるぞ。何を着ても似合うな」

ケイン「(サンジュンに)どうも」

サンジュン「ケインさん?まるで別人ですね!」

ケイン「本気を出せばこのくらい・・・」

サンジュン「ベリーグッド!最高だ!館長に挨拶を」

チノ「(ケインに)さあいこう」

チャンニョル「説明してくれよ」

イニ「何を?」

チャンニョル「あいつら・・・いつからああいう仲に?」

イニ「本人に聞けば?変身したあの子を見て動揺してるわけ?あなたらしいわ」

館長「ご友人と一緒ですか」

ケイン「また会いましたね」

館長「お美しい」

ケイン「ありがとうございます」

チノ「(館長に)ケインと面識が?」

館長「彼に話してないのですか?パク教授にコンペの審査を断られましてね。説得して頂けないかと訪ねたんです」

チノ「そうでしたか」

イニ「チノさん、会いたいという方が」

チノ「はい」

館長「私がケインさんのお相手を」

ケイン「(耳打ちで)心配しないで。レッスン通りにしっかりやるから」

チノ「(耳打ちで)信用出来ないね。何をしでかすか・・・」

イニに連れていかれたチノとサンジュンは重要人物たちを紹介される。

館長「教授の御嬢さんと親しいとは彼はラッキーだ」

ケイン「父とは無関係です。彼は父のことを知らないはずですから」

館長「本当に?」

その頃、駐車場に到着したヘミとテフン。

チノを追ってやってきたのだ。

館長からタム美術館内のキッズルーム製作の仕事を依頼されて驚くケイン。

館長「キッズルームを作るのですがあなたの作品を見てぜひお願いしたいと」

ケイン「その・・・館内のキッズルーム用にイスやテーブルを作るんですね?じゃ、今度・・・」

チノが戻ってくる。

チノ「お時間を取らせてしまいましたね」

館長「ゆっくり話せてよかった」

チノ「彼女とどんな話を?」

ケイン「あのね、聞いて、館長が私に・・・」

そこまで話したところでヘミが叫びながら会場に入ってくる。

ヘミ「チノさんどこ!?」

館長「同伴者がお二人ですか?」

ヘミ「二人?誰・・・どなた?」

ケイン「パク・ケインです」

館長「ケインさん、話の続きは月曜日に。美術館でどうです?」

ケイン「解りました」

館長「では、ごゆっくり」

ヘミに噛みつくチノ。

チノ「なぜ来た」

テフン「僕が教えた」

チノ「余計なことを」

サンジュン「留守番してろと言ったろ?」

ヘミ「この人誰なの?答えてよ」

チノ「外で話そう。(ケインに)ここで待ってて」

ヘミ「なんで私が外へ?」

ケイン「何か誤解してるようだけどまだ知らないのね。かわいそうに」

もうケインは既にワインを3杯以上がぶ飲みしている。

やばいと思ったチノ。

チノ「頼むから黙って・・・」

ケイン「いったいいつまで隠すつもりなの?」

チノ「何を言いだすんだ?」

ケイン「はっきり言ってあげなきゃだめでしょ?相手の気持ちも考えて。この子がどんなに傷つくか・・・」

黙って聞いていたヘミがいきなりケインの顔に水をぶちまけてしまう。

第6話へ